決 議 文

 路上生活を余儀なくされ、もしくは路上生活を余儀なくされつつある私達は、この十年来、極貧状態に置かれた私達の生活改善を多くの人々と共に求め続けて来ました。
 しかし、新世紀を真近に控えた今日においてさえ、私達の仲間は「長期不況」「失業」の影響などで日々増え続け、かつ長期に亘る路上生活を余儀なくされた仲間達が健康を害し、路上死を遂げるという現実が、大都市の至るところで、それがあたかも日常のように繰り返されています。その現実を目の当たりにした時、私達はいつも考えます、我が国の憲法 条の精神は一体どこに行ったのだろうか?と。何故、まだまだ働ける人々でさえ、路上に放置され、肉体的精神的にも痛めつけられ、これ程までな過酷な生活を余儀なくされなければならないのか?と。
 私達は、社会の底辺で呻吟し続ける人々の現状を直視せず、産業の意のおもむくままに労働者保護なき「リストラ」を推奨し、かつ路上生活を余儀なくされた人々の困窮すら放置し続け、私達の生きる希望すら提示し得ない今日の政府の姿勢に強い怒りを持ちます。私達は、路上で亡くなった仲間一人ひとりの無念を込めた死顔を忘れはしません。あと少しの社会的な支援があれば、あと少しの暖かい視線があれば…。排除と絶望しか私達に与えず、もう一度やり直そうと願う人々の社会参加すらも認めようとしない今日の社会の在り方を恨みます。
 私達は、何も好き好んで極貧生活をしている訳ではありません。私達の仲間の多くは必死で貧しくとももう一度やり直せる仕事を探しながら、日雇労働や雑業仕事に従事し、または日々の糧を必死で調達し、明日への生きる希望を見いだそうとしてます。けれど、政府・行政はその個々人の努力や能力を生かそうともせず、ホームレス現象を只、見えなくすることのみに予算を注ぎ込んでいるのが現状です。厚生省はテント生活者「対策」と銘打ち、メシ抜きの大規模宿泊施設に私達の仲間を一方的に収容する計画案を来年度の概算要求に盛り込む始末です。また、自立支援センターも労働行政が積極的に参画せず、抜本的雇用対策なきまま開始する予定です。そして、大坂磯村市長など地方自治体からは「排除をし易くするための法整備」が国に要求されている始末です。私達はこれら「排除」を前提とする「対策」、また、その場凌ぎの「対策」には反対します。私達の願いは一人でも多くの仲間の就労自立による社会復帰であり、私達が求めるのはそのための労働、福祉、住宅行政などが一体化した抜本的な支援施策です。
 私達は国が責任を持ち、私達の雇用確保と就労機会の保障、低家賃住宅の保障、市民的権利の保障を制度的に確固と確立する事を求めます。また、生活保護法の積極的な運用を行なうよう求めます。社会的弱者への暖かい視線を持ち、個人の尊厳を守りながら、共生、自立の精神をもった政治を行なうよう私達は強く求めます。
 私達は貧しくともやり直しの出来る社会を望みます。私達は路上死という悲劇がない 世紀を望みます。        
 
 そして、そのためにあらゆる社会的な力を結集させる事を訴えます。

二〇〇〇年十月二十日
貧しき民の総決起集会 参加者一同
(呼びかけ団体・新宿連絡会)


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