仲間たち!
俺たちは、94年2月東京都による新宿の野宿の仲間への理不尽な強制排除に抗議するたたかいの中から産声を上げ、以降、7年に亘り野宿の仲間、日雇の仲間、生活保護を勝ち取った仲間の利益を勝ち取るたたかいを全都、全国の仲間と共に進めて来た。
96年、青島都政による大がかりな強制排除には体を張ってたたかうと共に、排除ではない「対策」を求め、生活保護適用を求める行政闘争を皮切りに、保護施設の増設、越冬対策の拡充を求める行政交渉を続け、多くの成果を勝ち取って来た。また、97年秋、話し合いを拒否し続けて来た東京都をようやく話し合いの場につかせ、以降、仕事を探し、仕事に通える施設・事業=自立支援センターを開設させる要求運動に着手、三度の暫定的試行実施を経て、本年11月、念願の本格センターの開設を獲得するに至った。
他方、俺たちは「自らの力で出来ることは自分らの手でやって行こう」と野宿の仲間、生活保護の仲間など貧しき人々の共同作業で夜回り、炊出し、医療相談、
労働相談活動などを行い、路上の自治活動、文化活動を独自の力で進め、かつ、東京23区内の仲間のみならず、三多摩地区の仲間とも結びつく貧しき民の大きなネットワークを作り出して来た。
かつて、野宿の仲間達は「浮浪者」などと呼ばれ、「働く意欲のない敗残兵」の烙印を押され、犬猫同然、警察や管理者の手で街から排除され、福祉行政、労働行政の窓口に行っても罵倒され、追い返され、路上で力尽き野垂れ死にする運命しかなかった。路上で、病院で散った多くの仲間の顔を俺たちは忘れる事は出来ない。路上死しか選択肢のない、この野宿の仲間の現状を、それを強いる行政の考え方を、社会の偏見を、変えて行くためにこそ、俺たちは立ち上がった。
俺たちのたたかいは、仲間が生きて行ける最低限の防波堤を何とか作りだすためのたたかいであった。そして、これからもそのたたかいの連続であろう。俺たちは何も特別な事を要求したり、主張したりしてきた訳ではない。俺たちもこの社会の構成員だという、当たり前の事を主張してきたに過ぎない。野宿であるが故に、貧乏であるが故に、差別されたり、最低限の権利さえ保障されない事はおかしい、と言っているに過ぎない。だから、俺たちはへりくだったりはしない。堂々と俺たち貧しき者の主張を、俺たちの存在すら見ようともしないこの社会に訴えて来し、これからも訴え続けて行く。
俺たちのたたかいのその成果は徐々にではあるがこの社会に浸透している。それは、俺たち同様、日々の暮しに呻吟している人々がいかに多いのかの証左であると思う。この十年来の景気低迷と産業の転換はいつホームレス状態になってもおかしくはない人々を多く作りだした。政府の景気対策も雇用対策も貧しき人々には何ら実効性がなく、とりわけ旧来型の産業で働き続け、職を失った中高年齢層は明日への不安を抱きながら暮さざるを得ない今日の政治。決してホームレス問題とは他人事ではなく、社会が解決していかなくてはならない問題であるという認識が生まれ始めている。
俺たちは、他方でまだまだ残る偏見や迷妄や排除すれば事足りるという排外意識と日常的にたたかうのはもちろんだが、それのみならず、社会がいかにホームレス問題を「解決」していくのかという点を大胆に提起していく事がますます重要になって来たと考える。俺たちは昨年に引き続き「ホームレス問題に関する政策提言二〇〇〇」をまとめ発表した。一定の成果を勝ち取って来た俺たちが狭い殻に閉じこもっていては、せっかく勝ち取った「成果」すら次々と切り崩されてしまう。俺たちがようやく勝ち取った自立支援センターにしても、今後国や社会の動向も含め、広い観点から考えない限り、その拡大も拡充も望めない。
国や国会へのたたかいはまだ早いという向きも確かにある。もちろん仲間をより広く、より多く組織していく事も大事であり、仲間が直面している個々の困難を克服していく具体性も不可欠である。
が、それでも俺たちは、大きな観点から国政を視野に入れたたたかいにチャレンジして行く。強制排除を全国的に止めさせていくにも、若者の襲撃事件を止めさせていくにも、俺たちへの差別や偏見を解消させて行くためにも、もうこれ以上の路上死をなくすためにも、そして、なによりも、俺たちがもう一度やり直せる施策を多く作り出させていくためにも、国の政策を変えていかなくてはならない。俺たちの当たり前の主張を国にも認めさせていくしかない。
本日、そして明日へと続く国会、国への貧しき民の「大行進」は俺たちが飛躍する、その最初の一歩のたたかいである。
貧しき民(ホームレス)への雇用確保と就労機会の保障、低家賃住宅の保障、市民的権利の保障、そして、生活保護法の積極的な適用を、国の基本政策として実現させるためにも、俺たちは拳を高々と永田町、霞ヶ関の空にあげて行く。
仲間たち!多くのまだ見ぬ仲間の為にも堂々と行進しよう。胸を張って俺たちの主張を連呼しよう。やり直しのできる社会を!路上死のない21世紀を貧しき民の力を合わせ実現しよう! (文責・笠井和明)